*Zephyrs*

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ひとつのお願い(2)

県立緑森高校には、毎年210人の新入生が入学する。その210人が35人×7クラスへと編成され、1年生を過ごす。
もっとも、昔は240人の30×8クラスだったらしいが少子化の関係で、近年今の体制へと変わったらしい。
そのため、今では使われていない教室がいくつか存在する。そんな教室が、今では、昼休みの生徒の溜り場となっている。

緑森高校では毎年5月。1年生を対象とした、ゲームが行われている。
5人1チームとなって、校内のどこかに隠されている“お宝”をヒントを頼りに探し出すゲームである。
仕掛け人は、その年の3年生の有志と、1年生の担当教員。レベルの高い年と低い年とあるが、昨年度は今までで1番難しいとさえ言われた内容であった。しかしこの年の1年生には、そのゲームを至上最速でクリアしたチームがあった。
1年、2年と同じクラスとなった、5人である。
1人目は、茨城蕾人。冷静な分析力で、瞬時にゲームの答えへとたどり着いた人間である。
2人目は、その名前と行動から、「トノ(殿)」とよばれている女生徒。徳川葵(とくがわあおい)である。誰もが驚愕する情報収集能力を持っていて、「彼女に知らないことは無い」と、半ば恐れられている。大半の1年生は、ゲームの存在は知らないまま高校へと来るのだが、葵には最初から全て知られていた。
3人目、4人目は新谷怜治と花音美優である。
この2人は、他の3人のように周りを驚愕させる“なにか”を持ってはいないが、どんな場面でも動じないため、3人についていくことができた。
そして、最後の5人目が、七草芹菜(ななくさせりな)である。
彼女は、その記憶力で周りに驚愕された。
1目見るだけで記憶することができ、一度覚えた事は絶対に忘れないという記憶力を持っている。

そんな5人がチームを組んだため、最速クリアという快挙が達成された。同時に、全校生徒にその名が広まった。


しかし、今。そんな時から1年半が経った10月中旬。2年7組には、その内の4人しかいない。

                             ・・・・・・つづく